横浜地方裁判所 事件番号不詳 判決
右の者等に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検事守谷芳関與の上審理を遂げ次の通り判決する。
主文
被告会社湘南連合軍廃品処理株式会社を判示(一)の罪につき罰金壱万円に、判示(二)の罪につき罰金壱万五千円に、判示(三)の罪につき罰金弐万円に、
被告人諏訪部政雄を判示(一)の罪につき罰金弐千円に、判示(二)の罪につき罰金参千円に、判示(三)の罪につき罰金五千円に処する。
被告人諏訪部において右罰金を完納しえないときはいずれも金百円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。
理由
被告会社湘南連合軍廃品処理株式会社は横浜市南区堀之内一丁目百二番地に本店を有し連合軍より放出される廃品類の処理、淸掃等を業とするものであり、被告人諏訪部政雄は被告会社の会計係として庶務経理等の事務を処理するものであるが、被告人諏訪部は被告会社の右業務に関して被告会社の右本店所在地にある同会社第三処理場従業員の源泉所得税を免れようと企て毎月の給與を二分し二回に支給(第二回分は毎月翌月五日に支給)していたものをその一回分しか支給していなかつたように裝つて右第三処理場従業員である被告人諏訪部外三十八名に対する昭和二十三年六月分より同年八月分までの給與支給額が六月分十六万七千九百六十三円三十五銭、七月分十六万五千五百七十二円八十銭、八月分十八万四百九十二円五十銭であつたのにその各月一回支給分六万八千百十円五十五銭、六万二千三百六十七円八十銭、六万六千五百九十円五十銭を各同年六、七、八月における全給與と仕做して計算の上同人等より
(一) 昭和二十三年六月分合計 八千三百三十五円
(二) 同 年 七月分合計 八千三百三十円
(三) 同 年 八月分合計 一万九百五十九円
の各源泉所得税を各右給與支給月の翌月五日までに徴收しなかつたものである。
右の事実は
一、被告人の当公廷における供述
一、検事の被告人諏訪部政雄に対する昭和二十三年十一月四日附聽取書添附の同年六、七、八月分の賃金支拂調書と題する一覽表(表中黒字と赤字と併記してある箇所は赤字による。)
一、検事の被告人諏訪部政雄に対する昭和二十四年一月二十一日附聽取書添附の昭和二十三年六、七、八月分の賃金支拂調書と題する一覽表
とを統合してこれを認めるに十分である。
法律に照すと被告人諏訪部の判示各所為は所得税法第三十八條第六十九條第二項に該当するところ、判示(一)の罪については犯罪後の法律により刑の変更があつたものであるから刑法第六條により昭和二十三年七月七日法律第百七号による改正前の規定の定める刑と同改正後の規定の定める刑とを比較し軽い前者の刑によることとし、以上各所為に対し罰金刑を選択したうえ所得税法第七十四條を適用しその所定金額範囲内で同被告人を判示(一)の点につき罰金弐千円に、同(二)の点につき罰金参千円に、同(三)の点につき罰金五千円に処し、被告会社湘南連合軍廃品処理株式会社に対しては所得税法第七十二條により被告人諏訪部の判示各所為にそれぞれ適用したと同一の法條を適用し、被告会社を(一)の点につき罰金壱万円に、同(二)の点につき罰金壱万五千円に、同(三)の点につき罰金弐万円に処し、なお被告人諏訪部においてその罰金を完納し得ないときは刑法第十八條に従いいずれも金百円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置すべきものとする。
よつて主文の通り判決する。
(裁判長裁判官 高橋栄治 裁判官 石田一郞 裁判官 荒木秀一)